酒の肴としての餅
東京のが餅以外には菜つ葉位しか入らないのであるからそれよりも具が少ない雑煮はあり得ないとも考へられる。-
東京の雑煮をちやんと作つたのは旨いものである。それに使ふ餅は東京のは勿論話にならないが餅はどこのでも今は手に入つてその中で新潟の餅が飛び切り上等であるということは既に書いた。そして不思議にかういふやり方では一緒に入れる小松菜が何かも生きて来てこれが菜つ葉だといふ味がするのみならず気のせゐか、その緑も冴えて見える。それに純白に焦げ目が付いた餅で汁が光り、傍に味醂でなくて酒に屠蘇散を浸したお屠蘇があって正月が間違ひなく正月になる。この他にも餅の食べ方は色々あつてもかうした東京風に作つた雑煮が一番餅の味を引き立てるやうで、これが確かなことに思はれるのはかうする以外に餅が酒の肴になるといふことが考えられない。或はかうして始めて餅のやうなものも酒の肴になるので、これは東京風の作り方を工夫した人間、或はこの仕来りが出来た江戸の人間全体が酒飲みだつたことを示すものでなければならない。
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